写本のナスタアリーク体を読む3 (「カユーマルス王」第9対句)
前回に続き、「タフマースブ1世のシャー・ナーマ(シャー・ナーメ)*1」より、「カユーマルス王の御所」の場面にあるテキストの読解です。
「カユーマルス王」第9対句
今回は3対句目である、「カユーマルス王」の第9対句を見ていきます。
書かれているテキストは、以下のとおりです。
کیومرث چون شد جهان کدخدای، نخستین بکوه اندرون داشت جای
ナスタアリーク体のフォント「IranNastaliq」では以下のようになります。
読解
この対句の読み(古典ペルシア語音)は、以下のようになります。
kayūmars čūn šud jahān kad-xudāy,
naxustīn ba-kōh andarūn dāšt jāy.
現代イランの標準ペルシア語音では、以下のとおりです。
kayūmars čon šod jahān kad-xodāy,
naxostīn be-kūh andarūn dāšt jāy.
タジキスタンのタジク語におけるキリル文字綴りは、以下のとおりです。
Каюмарс чун шуд ҷаҳон кадхудой,
Нахустин ба кӯҳ андарун дошт ҷой.
意味は以下のようになります
カユーマルスが世界の支配者になった時、
初めに山の中に御所を持った。
詳細読解
前半最後の単語「کدخدای」(kdxday)は、最初の「ک」(k)の上の斜め線が省略されています。この場合、「کد」(kd)という綴りは「لد」(ld)と全く同じ見た目になり、「ک」(k)か「ل」(l)かは文脈で判断する必要があります。
(以降、作成中)
異文
Wikisourceにあるテキストでは、「カユーマルス王」第9対句は以下のようになっています。赤の太字は、「タフマースブ1世のシャー・ナーマ(シャー・ナーメ)」でのテキストとの相違点です。
کیومرث شد بر جهان کدخدای نخستین بکوه اندرون ساخت جای
発音は以下のとおりです(古典ペルシア語音。括弧の中は現代イランの標準ペルシア語音)。
kayūmars šud bar jahān kad-xudāy, naxustīn ba-kōh andarūn sāxt jāy.
(kayūmars šod bar jahān kad-xodāy, naxostīn be-kūh andarūn sāxt jāy.)
タジキスタンのタジク語でのキリル文字表記は以下のとおりです。
Каюмарс шуд бар ҷаҳон кадхудой,Нахустин ба кӯҳ андарун сохт ҷой.
意味は以下のようになります。
「カユーマルスは世界の支配者となり*2、初めに山の中に御所を作った」
(続く?)